標語聖句2005年度

女子学院の標語聖句は、その聖句の意味を生徒が1年の課題として考えるように、年度初めに院長が選んでいるものです。

2005年度の標語「しかし、成長させてくださったのは神です。」(コリントの信徒への手紙 I 3章6節)

標語として掲げた文は大変短いものですので、前後関係がわからないと理解しにくいかも知れません。3章の6節、7節の全文を紹介すると次のようになっています。「私は植え、アポロは水を注いだ。しかし成長させてくださったのは神です。ですから、大切なのは、植える者でも水を注ぐ者でもなく、成長させてくださる神です。」

コリントというのは現在のギリシャ共和国のコリントスで、ペロポネソス半島の付け根のところにある都市です。パウロがこの地に神の福音をのべ伝えるために困難な伝道旅行を敢行したのは、紀元50年頃のことでしたが、その当時コリントは交通の要衝として栄える大きな商業都市でした。さまざまな人種や職業の人々が集まる国際都市として知られる一方で、富とぜいたく、退廃と不道徳の代名詞にさえなっているような町でした。そのような背景もあって、パウロの宣教活動によって生まれた教会も、はじめからいろいろと問題を抱えていたようです。ユダヤ人キリスト者とギリシャ人キリスト者の反目もありましたが、特にパウロの心を悩ませていたのは、教会内部の分裂でした。自分たちをさまざまな教師や指導者たちの名前と結びつけることによって、党派や分派ができていたのです。「私はパウロにつく」「私はアポロだ」「私はペテロに」「私はキリストに」などと言いながら、あい争っていることを知ったパウロが、イエス・キリストによる一致を願って書き送ったのが、このコリントの信徒への手紙でした。

パウロは言います。「アポロとは何者か。またパウロとは何者か。この二人は、あなたがたを信仰に導くために、それぞれ神がお与えになった賜物に応じて仕事をしただけではないか。種を植える物があり、水を与える者があり、それぞれに大切な役割を担っているが、種に命を与え、成長させて下さるのは神さまなのだ。」

私たちの生活の中でも、同じようなことが言えるのではないでしょうか。人間を成長させて下さるのも、すばらしい頭脳をもっていろいろなことを可能にして下さるのも、究極的には神さまのなさる業です。しかし同時に私たちは一人ひとり、分に応じてなすべき仕事、果たすべき役割があって、それをおろそかにすることは許されません。最終的には神にすべてをゆだねる信仰をもって、人間としてなすべきつとめに励みたいものです。

これまでの標語より