中3クラス劇発表会

1月27日(土)に中3クラス劇発表会がありました。各クラス、文化祭が終わった10月の下旬からLHRや国語の授業時間、また休み時間や放課後も利用して準備を重ねて作り上げた劇を上演しました。写真と、上演後に「劇とは何か」というテーマで中三生徒が書いた作文を紹介します。

A組「ジョバンニの二番目の丘」

B組「夏の夜の夢」

C組「おばあちゃんのボタン」

D組「星空に見たイリュージョン」

E組「SAKHALIN」

 

「舞台」と「言葉」。今回の劇への参加と鑑賞で印象に残ったものだ。

「舞台」について。「舞台」は何にでも変えられる。まるでキャンパスのようなものだと思った。水平なステージに電話台を並べれば、薄暗い簡素な部屋が浮かんでくる。階段に高校生がたわむれて流れてくる灯を眺めれば、そこにしっとりとした草が生える土手が生まれ、川が静かに流れる。講堂の客席に騎士が飛び出せば、その瞬間木がぐんぐんと伸びて深い森が観客を覆う。ただ、観客から見えやすい高い台だと思っていた舞台はとても自在なものだった。

「言葉」について。中でも場面が切り替わる直前の言葉が生み出す様々な余韻に面白さを覚えた。例えば、私のセリフで「ジョバンニ、今日一緒にからすうり取りに行こう」というものがあった。その言葉には、あたたかな友情や夕日がきれいな穏やかな放課後を想像させる力がある。E組の「SAKHALIN」で場面の切り替わり前の「八月九日」という言葉は、もともと言葉の印象が強い上に、さらに劇中で言われることで深く大きく響いて強く心に残った。長崎への原爆投下、ソ連対日参戦、終戦直前、敗ける戦、特攻、モンペ、血…次から次へ言葉が浮かんでは沈んでいった。

劇に名前がある役で参加するのも初めて、劇を観るのもほぼ初めての私に「劇とは何か」がわかるとも思わない。しかし、人間中心の世界を観る者に見つめさせる、自由で美しい表現としての劇を知ることができ、私にとっては大きな収穫であった。

 

私は準備の段階で、自分の役の細かい設定、例えば好きな食べ物やどんな家に住んでいるのかを考えろ、と言われた時、なぜそんなことが劇のために必要なのか不思議に思った。

しかし、準備をして劇の練習をしているうちに、自分の中での劇の位置づけが変わっていった。劇とは究極の読解問題であると思う。装置を作るにも演技をするにも本当に細かい設定でさまざまなことが変わってくる。例えば、私たちの劇で、最後のセリフを明るく言うか、暗く言うか、たったそれだけでこの劇の結末さえ変わるだろう。私達はそれを台本から感じ取り、決め、演じなければいけないのだ。

先ほど劇は読解問題であると書いたが、厳密に言うとそれは少し違う。劇では問題に答えはない。私達がただ考えてその私達なりの答えをお客さんに、衣装、セリフの間合い、装置や音響などといった細かいところで発表するのだ。恐らく、見る側にはそれらの細かい工夫をしたことは伝わらない。だが、その完成した劇で、私達が伝えたいテーマは伝えることができるのだと思う。

今回の劇で私が感じたテーマは「辛い体験の先にある希望」だったように思う。劇とは、お客さんに伝えたいテーマの下に一つ一つの細かいところまで台本から読みとる、つまりこれは「究極の読解問題」と言えるのである。

 

クラス劇を通して、私は改めて演じることの難しさを痛感した。例えば、台詞一つとっても言い方次第で全く印象は変わってしまうし、演技する時のちょっとした仕草や歩き方など、動き方も大切な演技の要素である。「自分の役の人ならどう話すだろう?どう動くだろう?」と考えているうちに、普段の自分の話し方、動き方にも注目するようになった。いつも自分は話す時手をどう動かしているのか、目をどこに向けているのか。演出さんに演技する時の歩き方がお嬢様らしくないよと指摘されて、初めて自分の歩き方に注目するようにもなった。いつもなら気づかない自分自身がどんどん発見されていって、演技するのがとても楽しかった。

しかし、どんなに一人が頑張って演技を上達させたところで、みんなが頑張らなければ作品は成り立たない。特に今回はクラス全員が出演したのだからなおさらである。本番自分の出番が終わって舞台裏からみんなが演技しているのを見ているとき、ふとクラスの一人一人のつながりを感じた。どんなに台詞が少なくても、同じ役を演じる人が何人かいたとしても、クラス一人一人に割り当てられた台詞があって、クラスの誰が欠けてもこのような作品はできなかっただろう。私はなんだか劇って社会に似ているな、と思った。社会の構成員一人一人に役割があって、その中の誰が欠けても不十分なのだ。私もみんなと同じように、このクラスに、社会になくてはならない存在であってほしい。

私にとって劇とは、自分自身と他者との関係を見つめ直すことのできる、大切な経験となった。

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